【8月11日付】迷走する鳥取市庁舎問題を検証する  住民投票結果通り耐震改修を

 来年4月に市長選を控えた鳥取市では、市庁舎問題を巡って、竹内功市長が、住民投票結果を無視して事実上の「新築移転」方針を復活させたことに市民が反発し、混乱がつづいています。市庁舎問題の現状と打開の方向について検証します。
 住民投票は、議会によって提案され、市庁舎の「新築移転」案と「耐震改修および一部増築」案(以下「耐震改修」案)の二者択一で行われました。議会は、いったん市民が請求した住民投票条例案(「新築移転」に賛成、反対の二者択一)を否決しましたが、議会の混乱収集と市民の世論に押されたために再度、条例案を提案しました。
 議会の示した「耐震改修案(原案)」=本庁舎耐震改修および新第2庁舎と半地下駐車場の建設を20億8千万円でする=は、直接市民の声を聞く機会を設けず、市民合意のないものでした。
 そこで日本共産党は、「新築移転」案、「耐震改修」案のいずれも、〝住民投票後に市民の声を聞いて必要な見直をすること〟を提案し、全会一致で採用されました。住民投票条例には明記されなかったものの、条例の提案理由に入れられました。
 昨年5月20日、住民投票が実施され、有権者の過半数が投票し「耐震改修」案支持が6割を占めました。竹内市長も「結果を尊重する」とのべ、市民は誰もが耐震改修が実施されると思いました。
 しかし、竹内市長は、責任をもって「耐震改修」案を具体化するどころか、逆に市議会に対して、その計画づくりと検証を要請したのです。市議会は、議論の結果、「耐震改修案(原案)」の実施が可能かどうかについて、設計業者に検証作業を委託することになりました。日本共産党は「市長にこそ、事業の執行責任がある。耐震改修の計画作成と検証は、議会がすることではない」と主張し、その予算計上に反対しました。検証業務の委託が賛成多数で決まり、ここから、市当局と市議会・新築移転派(自民、公明系会派)による「市民不在の暴走と迷走」が始まりました。
 「耐震改修案」検証業務に手を上げたのは、「新築移転」案を提案した日本設計で、他に名乗り出るところがありませんでした。
 日本設計は、議会との協議で原案の設計内容に修正を加えたうえで、33億円の建設費がかかり、ヒ素処理費などでさらに10億円がかかる(市当局が試算)ため、この金額なら新築も可能だとの報告書を提出しました。
 市議会は、「原案通りにはできない」ことを認める一方で、「住民投票結果を尊重する」ことを確認し、今年2月市民説明会を開きました。
 竹内市長は、自ら提案・設置した専門家委員会の議論を経て6月、「新築移転」を基本とする市庁舎整備方針を突如発表。7月に開いた住民説明会では、「新築移転」に賛成する声もありましたが、多数の市民が反対しました。
 市庁舎問題の問題点は、第1に、竹内市長が市民の意向を無視して庁舎「新築移転」を強引に進めていることです。
 第2に、竹内市長が住民投票の前提がまちがっていたとして住民投票結果を否定していることです。〝「耐震改修」案が市議会の提案(原案)通りにできない〟ことを理由にしていますが、市民の意見を聞いて原案を見直し、「耐震改修」をすすめることが、市民の願い沿う最も現実的な対応であり、住民投票条例の主旨に即したものです。
 第3に、議会の多数を占める新築移転派が、市長の意向に沿う態度のため、竹内市長の暴走に対して議会がチェック機関の役割を果たしていないことです。議会制民主主義の根幹が問われています。
 日本共産党は、竹内市長が「新築移転」方針を断念し、住民投票の結果通りに「耐震改修」をするよう強く求め、「市民生活が大変なときに〝新たな箱物〟にお金を使うべきではない」との市民の思いに応えるべきだと訴えています。