【8月18日付】県立博物館で霊長類についての講演会  「霊長類守って」と伊谷原一教授訴え

県立博物館(鳥取市)は10日、開催中の企画展「サルとヒト」(25日まで)の関連事業として、霊長類研究者の伊谷原一・京都大学野生動物研究センター教授を招き特別講演会を開きました。
 伊谷氏は、人類の進化過程を解明する取り組みとして、遺伝的に人類とほぼ変わらないチンパンジー(父系父権社会)やボノボ(父系母権社会)の集団の成り立ちに関する研究を報告しました。
 今西錦司氏が、社会の基礎単位で人類特有の家族の成立条件として①近親婚の回避②外婚制③近隣関係の形成(地域社会の成立)④配偶者間の分業―をあげたことを紹介しました。
 父の伊谷純一郎氏が生前、家族の起源をチンパンジーに求め、雌が集団間を移動することによる近親婚の回避・外婚制、雄による集団防衛、狩猟、雌による出産育児、採取などの分業は確認できたが、配偶関係における独占(集団から認知された固定的な配偶関係)はなく、集団間で雄同士が殺し合うなど近隣関係を形成できず、家族の起源を見い出せなかったことを報告。
 一方で自ら研究したボノボは、チンパンジーと同じ父系であるが、母権である点で異なり、集団間で平和な関係(近隣関係)を築くことができ、雄がマザコンで母親付きの若い雌と親密な関係(配偶関係の独占)になる可能性があり、家族の原型(形成過程)の一つのモデルになり得ると指摘しました。
 最後に、開墾、焼き畑、ブッシュミート、密猟、ペット、ショーなどのために類人猿をはじめとする霊長類が減り続けている現状を警告し、一人ひとりが声をあげるよう呼びかけました。
 会場から固体識別やチンパンジーの雄による子殺しについて質問が出て、伊谷氏はていねいに答えました。