【9月8日付】米子市で地下水シンポ 地下水保全のルール確立は急務

 鳥取県と「県持続可能な地下水利用協議会」は8月31日、米子市で「地下水シンポジウム」を開き、約120人が参加しました。
 水ジャーナリストの橋本淳司氏が基調講演し、近年、日本でも地下水の減少、汚染がすすみ、地下水保全のルール確立が急がれると訴えました。
 「鉄1㌧の生産に100㌧、アルミ1㌧の生産に190㌧、紙1㌧の生産には220㌧の水が要る」とのべ、工業製品の生産にはきれいな水が必要だと指摘。河川などの表流水も雨水が浸透した地下水に支えられ、心配される水不足の要因として、地下水の(東日本大震災を機とする)企業や飲料水メーカーによる利用の増加、涵養のための森林の荒廃や水田の減少、(化学肥料の使用に伴う)硝酸性・亜硝酸性窒素などによる汚染をあげました。
 減反政策は減水政策だと批判し、水田は川の水を1日当たり2㍍地下浸透させ、1㌶につき2万㌧の地下水が涵養できるとのべました。減反でなく、おコメを食べて水田を守ろうと呼びかけました。
 日本は、アメリカから多量の飼料用トウモロコシや小麦を輸入しているが、アメリカは水不足(地下水が減少)で穀物の高騰は避けられず、日本国内で飼料用稲・米を自給することが必要だと指摘しました。
 鳥取県は、ミネラルウォーターの生産量が全国第3位で、県内の水道水の96%は地下水が水源であり、地下水保全条例の役割は大きいと強調しました。
 現状の土地所有者が地下水の所有者だという考え方は改め、流域単位の「地下水盆」として考えるべきだと指摘。地下水保全のためには、地下水を国民・地域の共有財産である「公水」として位置づけ、水の節水・再利用とともに流域の涵養装置(皮むき間伐等による森林の保全、休耕田の水張り、冬水田んぼ、都市の雨水浸透、自然護岸など)の保全が重要だとのべました。
 皮むき間伐は、スギの皮をむいて枯らし、1年後に伐採する方法で、乾燥によって生木の3分の1の重さになり、人の手で運べてコスト面でも有利になると指摘しました。6角形の柱30㌢に加工すれば、積むだけで家が立つとのべました。
 企業の水利用について、今後、企業の取り組みや製品製造における水使用量(うち素材・部品調達で海外の水使用が76%と多い)の情報開示が求められると報告。①雨水の利用②河川・地下水の利用③汚染水の排水(洗浄・希釈水)について、①の量を増やし、②③の量を減らす取り組みが、企業評価や融資の基準になり得るとのべました。
 また、日本企業が洪水、渇水、水の汚染、水使用料の高騰(北京は南から水を引けば7倍になる)などで、海外からの撤退リスクが高まり、国内回帰の動きも出ていると指摘しました。また、地下水が減少すると海水が浸食し、使えなくなるとのべました。
 会場から、外国企業の利益を優先するTPPで、水源の取得制限など地下水保全条例が機能しなくなるのではとの質問が出ました。
 橋本氏は、TPPでは減反がすすみ地下水の枯渇につながると強調しました。