【3月2日付】鳥取市庁舎問題で「市民の会」講演会  元我孫子市長「利益代表の議員はいらない」

 鳥取市の「市庁舎新築移転を問う市民の会」は2月16日、「市政のあるべき姿を考える」講演会を開き、元我孫子市長・消費者庁長官の福嶋浩彦中央学院大学教授が講演しました。
 福嶋氏は「支持者・支持団体の利益のために動くだけの議員はいらない。市長は一瞬たりとも、そのために動いてはならない。市民全体の利益のために、市民の声を聞いて予算や条例を提案することが市長の役割であり、議会で市民を代表して議員同士で議論して決めることが議員の仕事だ」と強調しました。
 地方自治の民主主義の土台に直接民主主義があり、住民投票の結果尊重義務は「ものすごく重い」と強調。「もし鳥取市議だったら」との質問に「結果が市長や議員本人の意にそぐわなくても、考えを改めて民意を遂行するために議論することは極めて当たり前のことだ」とのべました。
 合併特例債への質問に、片山善博総務大臣(当時)は、「地方交付税措置はウソだ(自治体の借金を国は肩代わりできない)」とのべたことを紹介。「人口減少社会は、市民が主権者として議論して責任を持って決めて、仕組みを縮小して質をよりよいものにすることが大事。公共投資拡大は自治体を壊す」と話しました。


 福嶋氏は、「この社会を変えよう、よくしようと思ったら、地方自治体から変えるしかない。国民、市民が力をつけるしかないが、その場所は地域、自治体だ」とのべました。
 自治体が直面する課題は人口減少だが、「人口を増やすことが前提のまちづくりでは、かえって人口が減る」として、「社会の仕組みを小さくすることで質を高めることができる分野がたくさんある」とのべました。
 公共施設、インフラは2020年代にいっせいに更新の時期を迎えるが、習志野市の試算では、現在の公共事業費が毎年確保できても、公共施設だけで総床面積の43%しか再生できず、小・中学校を建て替えただけで終わると指摘しました。
 公共施設の量を減らすことが必要で、多機能化、複合化、他市との共有、民間アパートの借り上げや家賃補助などで、必要な公共施設の機能の維持をはからないといけないと話しました。
 林業を例に、産業における生産の大規模化は、投資を回収するために商品の大量生産・低価格化をもたらし、過当競争による経営不安と資源の枯渇をもたらすと指摘。生産を小規模化し、適性価格を維持して経営を安定化させ、資源を管理して持続可能な産業に回帰させることを提案しました。


 高齢者の増加にともなう社会保障費の増大について、利用者は医療だけ、介護だけの利用ではなく、両方利用しており、医療、介護を一体のものとしてとらえ、医療、介護を一体的に扱う専門の総合診療医(全体の症状を見て各分野の専門医につなぐ)を育成することを提案しました。
 現在の医療は、臓器ごと、診療科ごとに分かれ、治療も薬の処方も別々におこなわれているが、腰(整形外科)、耳(耳鼻科)、腹(内科)の症状は一つの疾病から起こっている可能性があり、別々の治療・投薬がかえって症状を悪くしていることさえあるとのべました。
 人口減少の時代は、大きくてばらばらな仕組みを、小さくて有効な仕組みに再編して質を高めることが求められると指摘しました。
 エネルギーも、原子力や火力など一カ所で大量につくって広範囲に配るのではなく、自然エネルギーを地域で地産地消していくことが、大切だとのべました。
 これまで地方自治体は、国の成長戦略に乗って国の補助金を得て「公共事業」や「企業誘致」をやって失敗し、借金をつくり誘致企業は海外に出て行ったが、今度は、いっせいに「観光」だとの号令に乗っかっていると批判しました。


 合併特例債の話が出たとき、正気の沙汰ではないと思ったのは、国、地方の借金が先進国中最悪だったからだとのべました。
 職員には、①国の言う通りにする②前例通りにする③横並びにする―の三つのことを止めることを徹底し、「良いことは単独でもやる」「自分の頭で考える」ように指導してきた結果、市に対する市民の評価が上がり、職員の意識が変わって市民の中にどんどん入るようになったとのべ、そうでなければ「どうすれば市民が最も幸せになるのか、考えて動く自治体の意味がない」と話しました。
 補助金などの既得権についても、市民が幸せになるには、どの活動に補助金を出したらいいのか、公開の場でみんなで議論して決めたとのべました。
 既得権を切るために、従来の補助金制度をいったん廃止し、新しい補助金制度を創設して募集し、応募団体を市民でつくる審査会で審査し、既得権にしないために補助金の期間を3年にしたことを紹介しました。
 

講演会の席で「市民の会」の谷口肇組織部長から「開かれた市政をつくる会」(八村輝夫会長)の結成が報告されました。


 「開かれた市政をつくる会」は、「市民としてまちづくりの企画の立案から実施、評価までの各過程に主体的に参加し、意思決定に関わること」は「鳥取市自治基本条例」で位置づけられた市民の権利であり、①市民との対話を重視し、市民とともに進める民主的な市政の実現をめざす②住民投票の結果を尊重し、耐震改修を基本とした市庁舎整備をめざす③市の厳しい財政状況等を踏まえ、市民生活の安心・安全を重視して、健全財政をめざす―の目的を実現するために、「自治体選挙に当たっては、独自候補の擁立も検討し、擁立できないときは、政策が最も会の目的に近い候補を推薦することを検討する」と、会の趣旨を報告しました。


 鳥取市長選(4月6日告示、13日投票)について、立候補表明している3候補に公開質問状を送ったことを紹介。竹内功市長の後継者で「市庁舎新築移転」の前副市長からは返書なし、元民放アナウンサーからは「住民投票結果を尊重」するが「本庁舎は耐震改修、福祉文化会館、文化ホール、第2庁舎を壊し、駅南庁舎2階(図書館)、3階(駐車場)に移し、図書館、公文書館を市立病院跡地に新築する防災拠点の中に入れる」案を示したことを紹介しました。
 元県会議長の鉄永幸紀氏は、「住民投票結果を尊重」し、「市の4案(新築移転をベストとする)は、市民にはからずに市独自につくったもの。自治基本条例の趣旨に反している。人口も減少し、総合支所の充実、市役所機能の分散も必要。大きな本庁舎は必要ない。耐震改修・一部増築を市長の責任ですすめる。市民の声を聞きながら市政運営をすすめたい」と回答したことを紹介しました。
 会として、会の目的にもっとも近い鉄永氏を支援することを決めたと報告しました。