【4月20日付】大山と米子の水を守る会「産廃講演会」  汚染循環型から資源循環型に転換を

 「大山ふもとの自然環境と米子の水を守る会」は12日、産廃講演会を米子市で開き約300人が参加しました。明治学院大学の熊本一規教授が講演し、汚染循環社会から資源循環社会へ転換をと訴えました。
 熊本氏は、日本は大量生産・大量消費・大量廃棄で汚染物質を大量に出しているが、大気の汚染物質はばいじんとして、水の汚染物質は汚泥として処理施設で回収し、産廃処分場で循環させているだけで解決せず、汚染物質の発生量に比例して処分場を増やしていると指摘しました。


 ※廃棄し、焼却し、埋め立てるという処理方法では、回収した汚染物質は資源として活用できない。汚染水を次々とタンクに貯めるようなもの。


 熊本氏は、産廃問題の解決には、汚染源となるもの(重金属や化合物)は、極力製品に使用せず、使う場合も廃棄せずに回収して再び生産に使う社会システムの構築が必要だと強調しました。
 さらに、拡大生産者責任を実現するために、処理コスト負担を自治体(住民)から生産者(消費者)に転換(製品価格に転嫁)し、廃棄物の処理は生産者任せにせず、生産者の負担で公共管理(処分場の永久監視)をすることだとのべました。


 ※誰が処理するかではなく、誰が負担するかが重要。廃棄物の処理を事業者任せにすると不法投棄につながる。


 熊本氏は、処分場の汚染水は必ず漏れ、周辺は汚染地帯になり、土壌汚染がある限り大気と水の汚染は続く(放射性物質も同様)と明言しました。

 遮水シートやコンクリートなどの人工物は必ず劣化し、自然物の粘土(ベントナイト)も難透水性であり不透水性ではないので、必ず漏れると指摘しました。
 有害物質は永久に残るため、ドイツでは処分場跡地7万カ所、工場跡地17万カ所の永久監視が行われていると報告。汚染水漏れには鉄板(矢板)を打ち込んで措置するなど、その都度防止対策が講じられており、対策が可能な場所にしか処分場を建設してはならないと強調しました。


 開発コンサルタント会社に勤めていた男性は、大山の火山灰が厚く堆積した地層では、(液状化して)矢板は打ち込めないと指摘。産廃処分場建設予定地が、(永久監視を要する)最終処分場に適さないことが明らかになりました。また、計画地(標高13㍍)から、1・5㌔離れた水道の福井水源地(標高が2~3㍍と低い)に汚染水が流れ込む可能性も指摘されました。


 参加者から「どのように産廃処分場を阻止したらいいのか」を聞かれた熊本氏は、住民が反対運動を展開し、①生産過程で有害物質を極力使わない、出さないシステムの確立②有害物質を資源として回収し生産に使う③処分場の永久監視④公共管理と事業者負担⑤拡大生産者責任の実現―を行政に突きつけることだと助言しました。
 熊本氏は、その他にも、以下の点について言及しました。
 ①処分場への有害物質の混入が避けられない。検査は目視が中心で、抜き取り検査も溶出試験がPH5・8~6・3と甘い。日本で平均的に降る酸性雨はPH4・3であり、重金属は酸性になるほど溶け出す。土壌汚染の検査対象はカドミウム、銅、ヒ素だけで水銀などの重金属がない。水銀は水質汚染の基準だけで、大気汚染の基準がないため、煙突から排出。
 ②遮水シートは経年劣化し、継ぎ目があり、不等沈下で破れやすい。日本遮水工協会マニュアル「遮水シートは時間とともに劣化…。必要に応じて貼り直すことも考慮」。ベントナイトは1年に32㌢水を通す。
 ③処分場は汚染源になる。1978年の米国ラブキャナル事件(過去に投棄された廃棄物による地下水や土壌の汚染で健康被害が起きた。流産、死産、先天異常、がん患者の高確率の発生。約900世帯が移転)は、埋め立て完了後の25後。跡地利用は地主の自由。県環境管理事業センターも「埋めた廃棄物も雨水等で悪いものは流され普通の土のようになる」と汚染源になることを認めている。
 ④自治体レベルでも拡大生産者責任の実現が可能。自治体が適正処理困難物に指定し、メーカーが回収・リサイクルする。EUのようにメーカーが家電製品等を無料回収する。デンマークでは、指定された処理施設への搬入が義務づけられ、処理費用は生産者が負担する。