【3月12日付】鳥取市で共生の森10周年事業-地域の魅力は特産品ではなく「人」

 鳥取県が提唱して企業・団体参画で森林保全事業を行う「とっとり共生の森」制度の開始10周年記念行事が4日、鳥取市で開催されました。


 とっとり共生の森は、現在、県内外の18の企業・団体が参画し、県内の森林21カ所(483㌶)で植樹や下草刈りなどの作業をしています。


 行事では、アーティストの桜井和寿、坂本龍一の両氏、音楽プロデューサーの小林武史氏が設立した、環境プロジェクトに非営利で融資を行う「ap bank」の経営者を歴任し、環境ビジネスを手掛ける見山謙一郎氏が講演。企業や生協、行政が取り組みを発表しました。


 見山氏は、①原点に帰る②逆転の発想③なぜやるのか?whyを大切に活動し、発信し、つながる―をキーワードに森林保全や地域活性化の可能性を語りました。


 原点に帰る大切さについて、バングラデシュでの学生団体の活動を紹介しました。


 バングラデシュは貧しい国で、多くの子どもたちが裸足で歩き、けがをして破傷風で亡くなっています。それに対し、アディダスが格安シューズを作って普及させようとしましたが、失敗しました。


 見山氏は、失敗した理由として①現地に材料がない②手工業的生産③コストが合わない―をあげ、先進国のやり方でやろうとした結果だとのべました。


 学生たちと「バングラデシュの子どもたちが貧しいのは、親に仕事がないために収入がなく、子どもに教育を受けさせることができないためだ。貧困の連鎖を断ち切るためには、親に仕事をしてもらって、収入を教育費に充ててもらうことが必要だ」と話し合い。学生たちは、シューズの代わりになるものとして、ワラジ作りを提案しました。


 バングラデシュは三毛作で稲わらが豊富です。しかし、肥料や飼料にするために、稲わらが使えないことがわかりました。すると、現地で活動するNGOが、同国は縫製大国であり、布切れが大量に出ると教えてくれました。

 

学生たちは、アパレル会社と提携して、布切れでワラジを作り、ルームシューズとして日本で売り出す事業を始めました。「ルームシューズを売ったお金でシューズが買える」と考えました。


 見山氏は、バングラデシュに寄り添って原点=子どもたちにシューズと教育を=を考えた結果、未来の産業につなげることができたとのべました。


 次に、逆転の発想で①ポジティブな事柄に課題が潜んでいる②ネガティブな事柄にチャンスが潜んでいる―という検証がいると指摘。「鳥取県はオートバックスがないことで話題になり、新しい商売『すなば珈琲』が生まれた」「東京の高級料理店は、駅から遠くて不便でも繁盛し、店主は『近ければ、いつでも行けると思って行かない。遠いからこそ、機会を作って行きたくなる』と言っている」とのべました。


 見山氏は、why(なぜ、それをやるのか)が大事だとして「人はwhat(なにを、やるか)、how(どう、やるか)を語りがちだが、why、なんのためにやるのか、原点を語ることが大事だ」と強調。人には、それぞれ自身の原点となる活動があり、「自分はその人の活動にどう関われるか。サポートできることはないか」を考えることで、つながり、発信することができ、地域がまとまり、活動が大きくなると訴えました。


 「森林保全の分野でも、生み、育て、つながる3つの楽しみがある。地域の魅力は、産品や産業ではなく、そこに住んでいる人や生活だ」と指摘しました。