【6月18日付】鳥取県弁護士会が憲法講演会 改憲に匹敵する解釈変更は許されない 9条に自衛隊書き込めば2項は空文化

鳥取県弁護士会は11日、鳥取市で憲法講演会を開き、約200人が参加しました。AKB48とコラボした著書「憲法主義」がある九州大学の南野森教授が憲法の最高法規性について講演しました。


 アイドルグループとの企画を引き受けたのは、2013年に安倍政権が内閣法制局長官の首をすげ替えたことに危機感をもったからだと紹介しました。


 歴代自民党政権のもとで内閣法制局は、憲法9条2項(戦力不保持、交戦権否定)によって、自衛のための最小限度の実力=自衛隊を合憲とする根拠=を超える集団的自衛権は憲法違反としてきたが、安倍首相が長官を自分の意見を聞く〝お友達〟に変えることで合憲にしてしまったと批判しました。


 これまでは、長官が定年まで勤め、後任は副長官がなることで政治的中立性を担保してきたとのべました。

 集団的自衛権がいるというのなら、国民的に議論して国民投票で憲法を変える必要があるが、このプロセスを省いて1内閣の閣議決定で解釈を変えて合憲にしたとのべました。


 その上で、「憲法が国家権力を縛るというのは、憲法の解釈で縛っている。解釈が命。解釈を変えたら実質的に憲法を変えることになる。このようなことが許されるならば、ほかの憲法解釈もいくらでも変えることができる。政権の都合で解釈を変えて実質的に憲法を変えることが許されるならば、憲法の最高法規性が崩れる」と指摘し、政権が何をやってもいいことになると警告しました。


 憲法の一番重要な部分が解釈改憲されるのであれば、もっと軽微な徴兵制は、政府が憲法違反の根拠とする18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)も解釈を変えて合憲にすることもできると指摘しました。


 参加者から9条の1、2項を変えずに自衛隊を明記するという安倍首相の狙いについて質問が出ました。南野教授は「安倍首相はおそらく、自衛隊を名実ともに合憲化するだけで、今のままと何も変わらないから安心してくださいと言うだろう」とした上で、「自衛隊の明記は将来的には2項削除と同じ効果を持つ。拡大解釈されて普通の軍隊になる」と答えました。


 「北朝鮮のミサイル攻撃に備えるために9条改憲が必要」との意見に対し、「迎撃ミサイルを撃ち落とすのは日本でもアメリカでも無理。9条を変えたところで北朝鮮が核ミサイル開発を中止してくれるわけではない。アメリカの強大な軍事力でも9・11は防げなかったし、ミサイルは撃ち落とせない」とのべ、軍事力による解決はできないと強調しました。


 「共謀罪」法案についても警察権力による乱用の危険性や社会の委縮を指摘し、法務大臣ですらまともな答弁ができない法案は通すべきではないとのべました。また、法の番人だった内閣法制局は集団的自衛権の行使を合憲としたときから、チェック機能は期待できないと指摘しました。


 司法のあり方について、最高裁の人事権は内閣にあるが、後任人事は、政治的中立性を確保するために裁判官の中からは最高裁の出した推薦名簿、弁護士の中からは日弁連の出した推薦名簿から選ぶのが慣例だったが、安倍政権は人事権を行使して〝お友達〟を法の部門に配置し始めた(さらに弁護士枠を減らした)と警戒しました。


 私たちのできることとして、「暴走族なら道路交通法で取り締まれるが、憲法を守らない政権を取り締まることはできない。安倍政権は憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を無視する憲法違反もした。国民が憲法守れと声を上げるしかない。私たちの声は微力だが、無力ではない。与党の政治家に圧力をかけることができる人たち、マスコミや野党政治家、裁判官などをサポートする上で、私たちが声を上げ続けることが大きな力になる」と呼びかけました。