【6月18日付】鳥取環境大学が公開講座 生活者のための制度に転換を

 鳥取環境大学は3日、鳥取市で公開講座を開き、千葉雄二教授が講演しました。


 千葉教授は、グローバル化(反グローバル化)の中で生活者に対する政府の果たすべき役割について語りました。


 世界と日本の現状について、市場のグローバル化により、富集中と経済格差、失業が生まれ、生活者が高齢や貧困などにより市場から見放されている。生活基盤が個人の努力ではどうにもならない。世界的に生命が危機にさらされており、生きていく生活基盤をつくる仕組みが必要▽世界的にも日本においても、戦争、独裁、権力の恣意により生活の場が崩壊している。①生命の危機=戦争、テロ、難民など生命、身体、精神への危機②社会制度への脅威=思想や表現の自由への脅威、差別の表出や政治経済の格差など平等への脅威、格差と社会保障の不備が存在する▽公的領域と私的領域の中で個人、産業、市場、公のそれぞれの役割があり、政府はどこまで個人の生活(生活基盤)に関与すべきかが課題となっていると指摘しました。


 ヨーロッパ諸国のシリア難民の受け入れ制限やトランプ米大統領のメキシコ国境の壁建設、イギリスのポーランド移民の増大による反EU路線を例に、国家間と国内地域間の移動の自由が制限されているとのべました。


 その背景に、安全、治安、経済格差などによる難民、移民などの、失業率の高い国(地域)から失業率の低い国(地域)への移動がある▽難民・移民は就業の困難さから、低賃金・単純労働になだれ込み、競合する国内の労働者が反発し、排外主義が横行▽難民・移民は社会的帰属性の喪失、格差、差別、いじめなど精神的危機を抱え、破壊的欲求や宗教・特定集団に帰属の傾向がある▽日本は県単位での可処分所得調整機能があり、行政単位の地域経済格差は小さい。鳥取県はGDP1・7兆円に対し、政府からの移転資金は5000億円(地方交付税など)。行政間の格差は少ないが、個人間、世帯間の格差は是正されていない―と指摘しました。


 独裁国家の成り立ちについて、イラク=フセイン大統領の少数派・スンニ派による独裁権力、シリア=アサド大統領による少数派・アラウィー派による独裁権力だとのべ、少数派を秘密警察や軍の要職につけ厚遇することで、多数派を弾圧しながら平穏な生活の場を提供していると紹介しました。


 グローバル化について、地域間格差・賃金格差がある間は進展し、多国籍企業が安いコスト(人件費、環境・労働法・税法の緩さ)を求めて移動し、低技能者が職を喪失して失業が大量発生し、一方で高技能者の給与が増大、富・資本が集中し、格差が拡大する▽人格的精神的危機から脱出し、アイデンティティーを得るために差別言辞の表出、憎悪対象を求める▽国際法、多国間国際協定によってひずみを解消する必要があると強調しました。


 具体的には、国際的な経済的強制力・輸入規制を伴う制度の整備、法人税の引き下げ競争に歯止めをかける国際法、国内の社会保障費の確保、租税回避の禁止、過剰な富集積の抑制、国際的な労働法(地域別最低賃金、移民・出稼ぎ者・不法労働者への最低賃金の保障)、国際的な環境基準の統一をあげました。


 日本の世帯資産は、上位0・1%が5%の資産、上位2%が19%の資産、上位8%が37%の資産(517億円)を有するとの格差を示し、過剰な資産(高額相続資産)の社会への還元などを訴え。思想の自由と身体的精神的権利の保障、健康保険・介護保険の資金の確保と施設・サービスの適正化、補助金による社会制度の推進や行政裁量・行政事業化(恣意的運用)から脱却し、法制度によって位置づけることで、分配制度の強化、発病予防、自殺予防、自動ブレーキ・運転など安全システム、ネットスーパーなど買い物支援、市場・事業者の自主性によるイノベーションを尊重するなど、社会の自律的発展を促すよう提案しました。