【7月23日付】岩美町で輝く自治体フォーラム 人口減少に負けない地域づくりを

 岩美町で7、8の両日、第22回「全国小さくても輝く自治体フォーラム」が開かれ、全国から70団体、約200人が参加しました。


 「持続可能な地域社会総合研究所」の藤山浩所長が「人口減少と田園回帰1%戦略」と題して記念講演しました。


 人口減少は、死亡数が出生数を上回る自然減と転出が転入を上回る社会減によって起こります。


 「田園回帰1%戦略」を唱える藤山氏は、毎年地域人口の1%の定住(転入)を実現することで人口減少を食い止め、地域を維持することができると強調しました。


 藤山氏が開発した人口予測プログラムは、5年前と現在の男女の人口(5歳間隔)を入力して将来人口を予測します。どの世代が転出超過になっているかわかり、どの世代を何人増やせばいいか対策を立てられます。


 藤山氏は、地域の単位を1次生活圏=小学校、公民館、商店や病院のある昭和の旧村(300人~3000人)=として、島根県の中山間地域225地区(地域人口30万人)を調査。毎年3077人(全体の1%)の定住増加で人口の維持、安定化が可能という結果になりました。


 藤山氏は「40の県で毎年3000人ずつ12万人の定住増で、過疎地域の人口は維持できる」と指摘しました。12万人は地方が毎年、東京圏(1都3県)に吸い取られている数だとして、田舎への定住促進の意義を説きました。


 人口減少対策の処方箋の例として、定住する世代の割合を20代前半男女2人:30代子連れ夫婦3人:60代夫婦2人としました。


 藤山氏は「ドバッと人口を取り戻そうとするから展望が持てない。どこまでがんばれば目標が達成できるか、わかれば元気がでる。毎年1%増をじっくり続ければ人口を安定化できる」とのべました。
 岩美町(人口1万1862人、高齢化率34・1%)について「60代が多く、60代が元気なここ10年が勝負だ」として、出生率(現在1・47)を2・07に引き上げる▽若者の流出(進学、就職)を抑制する▽定住を増加させる(20代前半、30代前半、60代前半の各夫婦14組、合計98人)―ことを提案。「毎年0・9%増で人口1万人で安定する」とのべました。


 さらに、地区別に取り組むことが重要だとして島根県邑南町の例を紹介しました。


 邑南町(人口1万1200人、高齢化率42%)は12の公民館区ごとに定住プロジェクトに取り組んでいます。各地区約1000人につき20代男女、30代、60代の夫婦が毎年、各1~2組で人口安定化が可能です。


 人口の大幅転出超過から転入超過に転じた例として高知県梼原町をあげました。6区の自治組織が会社(経済組織)を立ち上げて区長が社長になり、再生可能エネルギー100%をめざしていると紹介しました(3カ所の集落活動センター=「小さな拠点」=では、農産物の集荷、まちの駅、道の駅、学校給食用への出荷、高齢者の配食サービス・買い物支援・移動手段確保、ガソリンスタンド、レストラン、直売、加工品づくりの拠点整備、集落営農、農林業研修生の受け入れ、農林資機材の販売、祭りの開催、グリーンツーリズムなどを実施)。


 問題を解決するためには現場を知らなければならいないとして、30代女性はどこで増えているかと提起し、山間部や離島だとして、「都会的な生活を変えるのが移住の目的の若者は、簡単に帰省できる場所でなく、本格的な田舎に住みたい」とのべました。


 定住を1%増やそうと思えば、地域内の所得を1%増やす必要があると指摘しました。
 所得を増やす方法として、地域外に流出している所得の1%を取り戻すことを提起し、福井県池田町(人口2638人)を例に処方箋を紹介しました。


 家計調査によると同町の1人当たり食料品購入額と購入先は、域内購入額が5万974円で域外購入額は17万円でした。


 同町の品目別所得創出額をみると、地元でパンを売る場合、売り上げに占める地元の所得創出額の比率は、販売のみ地元=11%、製造・販売が地元=43%、原料・製造・販売が地元=46%になりました。生鮮野菜の場合、域外から仕入れてスーパーで販売=11%、地元生産者が産直市で販売=52%でした。


 藤山氏は「店での販売のみより、生産・加工・販売まで地元でした方が5倍も地元にお金が落ちる。全国チェーンの店、レストランや居酒屋(人件費のみ地元に落ちる)より地産地消の農家レストランが地元にお金が落ちる」とのべました。


 また、福井都市圏全体で域産域消する(域内でエネルギーや原材料を作る)ことでより地元にお金が落ちると話しました。


 目標を持って取り組むことが大事だとして、島根県の地域スーパーが地産地消の毎年1%増に取り組み、6年間で8・4%から14・9%に引き上げたことを紹介しました。


 最後に地域運営組織(自治組織+経済組織)の形成で、地域の課題を経済活動によって解決しながら雇用も生みだす取り組みを提起しました。


 たとえば、1人役の仕事に1人当てる必要はなく、逆に1人役に満たない仕事でも組み合わせて1人役にすることができるとして、集落営農(A~E)×(0・2~0・4人役)、小さな拠点(0・6人役)、集落エネルギー(0・4人役)、集落土木(0・4人役)などの組み合わせで仕事と雇用をマッチングすることができると話しました。