【12月10日付】鳥取環境大学サイエンスカフェ 地球外知的生命体探す意味は

 鳥取環境大学は11月25日、兵庫県立大学天文科学専門員の鳴沢真也氏を招いて鳥取市でサイエンスカフェを開きました。鳴沢氏は「地球外生命体の話」と題して参加者とトークしました。


 鳴沢氏は、太陽系がある天の川銀河には1000億個の恒星があり、同様の銀河が1000億個~1兆個ある▽恒星が惑星を持つ割合は多くて10%▽その中で地球型の惑星(海がある。近くで温度が高いと水が蒸発し、遠いと二酸化炭素が凍って温室効果がなくなる)がある(1個?)、と推測されるとして「知的生命体は存在する」と結論付けました。(以下、天の川銀河の中での話)


 知的生命体の定義について、我々が発見できるためには電波を出している必要があり、「通信(電離層を超えて宇宙に広がるテレビの電波など。最強のレーザーなら数千光年先でもキャッチが可能。ラジオは電離層を超えない)ができるまでに発達した文明を持った生命体」だと説明しました。


 さらに、地球が誕生(46億年前)し、海に生命が誕生したのは40億年前で、海があれば生命は誕生すると考えられる▽人間の祖先は1億年前に生まれた、夜行性のネズミのような哺乳類だった。恐竜が絶滅(6600万年前にユカタン半島に隕石が落ちて煤塵が地球を覆い植物が枯れた)するまでネズミのような姿だった、として「生命が誕生するのは比較的簡単だが、文明を持った知的生命体に進化する確率は少ない(0・01%程度とすれば、文明を持つ生命体が存在する惑星は1000億×0・1×0・0001=100万個)」と指摘しました。


 「地球外知的生命体と人類が出会える可能性はあるか」と聞かれた鳴沢氏は、地球から最も近い恒星はケンタウルス座アルファー星で、距離は4光年(光のスピード=秒速30万㌔で4年かかる)だと紹介。地球から知的生命体の存在する可能性のある惑星まで数百光年の距離があり、光の速度を超える物質はなく、直接出会える可能性はないと答えました。もし、出会えるとしたら生身の体を機械に置き換えた人工知能のサイボーグだろうとのべました。


 電波の発信と受信で間接的に接触できる可能性はあると指摘し、そのために観測しているとのべました。


 人類が電波を受信する可能性がある現存する知的生命体の存在する惑星の数は、「1年に生まれる恒星の数」×「惑星を持つ率」×「海のある地球型惑星の率(=生命が生まれる)」×「生命が知的生命体に進化する率(=通信を行う)」×「文明が存続する年数」などの関数で推測される(ドレイクの方程式)と紹介しました。


 人工の電波と自然界の電波を比べると、人工電波は横波だが自然界の電波は混ざったもので、人工の電波を見分ける方法は、横波の電波▽周波数帯の幅が狭い▽素数(1、3、5…など)間隔で発せられている▽惑星が夜なのに光っている、などでわかるとのべました。


 自らはレーザー光線をキャッチする方法で、7色のスペクトルに分けてグラフ化し、どの周波数(色)が跳ね上がるかを観測していると報告しました。


 国際的取り決めである「地球外知的生命体の発見後の活動に関する諸原則についての宣言」では、宇宙からの人工的な電波を受信した場合は、徹底検証する▽まちがいのない確証が得られるまでは公表しない▽確証が得られた場合は、隠蔽してはいけない▽勝手に返信してはいけない。国際会議を開いて内容を決めなければならない、と紹介しました。


 知的生命体の姿について、情報を集積する脳がある▽光合成で得られるエネルギー(1平方㍍当たり1日40~80㌔カロリー)は小さいため、消費量の多い脳(人間の場合は基礎代謝の20%で1日340㌔カロリーを消費)のエネルギーを賄うことはできない。したがって植物ではない▽脳の膨大なエネルギーを賄うためには酸素呼吸が必要。水中は酸素が溶けにくいので魚ではない▽食物を摂取する口がある▽センサーが脳に近くに集中している。上から順番に目、鼻、口がある▽道具を握れる前足がある。脳がコントロールできる足の数は4~6本▽同様に指の数は4~6本、と指摘しました。


 将来の人間のあるべき姿を倫理的に考える時期に来ているとして、「ゲノム編集で造り換えたり、生身の体を機械と人工知能に置き換える」ということでいいのかと問いました。
 地球外知的生命体を探す意味について、「現生人類は16万年前にミトコンドリアイヴから生まれたホモサピエンスであり、本来、国境も人種もない」とのべ、自分探しの旅であり、地球人としてのアイデンティティーの確立につながると指摘しました。