【4月8日】鳥取市リノベーションまちづくり講演会 縮退成熟化時代に必要なまちづくり

 鳥取市で8日、リノベーションまちづくり講演会が開かれ、各地でまちづくりを手掛ける清水義次氏が講演しました。(以下講演要旨)
 1992年にバブルがはじけてデフレが始まって25年が経ち、人口は減少に転じました。経済が縮退する中で、どのようなまちづくりをすれば、よい暮らしができるのかが課題です。


 商店街は空洞化し、その周辺の住宅街も空き家が増え、スポンジ化しています。政令市も県庁所在地も人口3万人の地方都市も例外ではありません。


 土地の価値は下落し、使われなくなった空間資源だけが増えています。公共施設は山のように余り始めています。農地も山も森林も荒れ果て、気候変動による大災害期を迎えています。
 今までの行政主導の補助金頼みのやり方は時代おくれとなり、縮退時代に適合したやり方に変える必要があります。


 民間は経済合理的にしか動きません。その結果、経産省の中心市街地活性化法は失敗しました。バイパスができて郊外の土地が安く手に入れば、イオンモールなどが建築費の安い建物を建てて(坪単価30万円)、テナント代(月1坪2万円の賃料)で投資を即行で回収します。


 継続性を考えれば、経済合理性を無視することはできません。公共施設の活用も同じです。
 では、どうすればいいか。


 一つめに、今ある資源を活用して新しい使い方をして(リノベーションして)、まちを変え、地域経営課題を一気に解決することが大事です。日本は世界にもまれなインフラ整備、地域社会基盤が行き届いた国です。これをいかに生かして豊かな時代をつくるかです。


 鳥取市などの地域課題は、いい仕事がないから、県外の大学に行って2度と帰れないために起こる人口減少(転出による社会減)です。リノベーションまちづくりとは、空き家や空き店舗が埋まるだけではありません。同時に、一気に地域課題を解決する(いい仕事をつくる)ことをめざすものです。


 それは、遊休不動産を活用する利回りの高い、収益性の高い経済合理性のある事業だからできることです。


 二つめに、遊休不動産は暫定的に利用することが基本です。長くて5年です。解体・撤去・新築型(再開発型)に比べてスピードが速く、収益性が高いのが特長です。なので銀行も安心して融資ができます。


 地方も国も財政難で国債は天文学的赤字です。社会保障費は増大を続け、医療費だけで国の税収と同額です。


 公共も民間も境目はありません。何をやったら、それぞれの街が住みよい街として持続が可能になるのか、それがリノベーションまちづくり(※)です。


 ※ 遊休不動産を再生(リノベーション)して産業振興、雇用創出、コミュニティー再生、エリア価値の向上をはかる。


 民間人を活用して道路空間や駐車場をまとめて使うコモンズ(特定非営利活動法人)協定▽立地計画に民間人を使うコンパクトシティーモデルなど、まちが変わろうとして動き始め、国交省も注目しています。


 地域を再生するためには、小さなリノベーションまちづくりと、大きなリノベーションまちづくりをセットで実施することが重要です。民間不動産を活用した個別のものと、エリアの中の駐車場、道路、公園など公共空間、公共施設を活用した大きなものを組み合わせて実施します。


 公民連携の大きなリノベーションと、その周辺の空間資源のリノベーションです。民間が主導して行政がフォローする、この連携が大事です。


 行政が民間に丸投げしてはだめです。図書館をツタヤに任せて、客は増えたが質が落ちたなど、日本の大企業は社会性も公共性もありません。公共心をもった地元の家守舎や企業を使うことが大事です。


 中心市街地は衰退し、新築や再開発のプロジェクトは経済的に成り立ちません。市長は事業者と結託して再開発をやりがちですが、公共施設を建て替えるときは、かけたお金=税金=を税収で取り戻すことを考えるべきです。そして、新築ができる環境に街を取り戻すこと、それが行政の仕事です。


 公共施設のリノベーション→賑わいを取り戻す→客足が増え落とす金が増える→店の収益増→仕事増→雇用増→エリアの価値増→地価の上昇→固定資産税増→賃貸料増―の好循環をつくること、賑わいを取り戻すために公共施設に投資したお金を、税収で取り戻すことが行政の仕事です。


 一方で補助金頼みの開発は失敗します。タワーマンションの下に店舗をつくって資金を回収しようとするようなやり方は、床の需要がないのに、余剰な空き店舗をつくって、賃貸料の下落、地価の下落を招き、エリアの価値を下げるだけです。床をつくれば売れるという地価上昇が前提の事業は失敗します。


 北九州市小倉魚町のリノベーションまちづくりの話をします。


 2010年から始めた事業で22のプロジェクトが実現し、445人の雇用が創出され、都市型産業が集積し、歩行者が3割増えました。


 最長5年で回収することを目標にビジネスオーナーと不動産オーナーをマッチングして、家守舎がリノベーションし、賑わいを取り戻して、最初坪当たり4500円だった賃料が15000円以上になり、エリアの価値が高まりました。


 裏通りの歩行者は、ほぼゼロだったのが人ごみのできるほどに回復しました。


 6年で新築可能な街に生まれ変わり、街の自律が生まれました。エリア価値が高まると直接、間接のプロジェクトの倍の起業する人たちが生まれました。


 リノベーションまちづくりは都市型産業(デザイン、コンサル、飲食店など)を集積し、その周囲にコミュニティーを再生することが、目的の一つです。


 ぜひ、鳥取のリノベまちづくりに産業のことを謳ってほしい。新しい産業が必要です。人は仕事がなければ生活できないからです。


 リノベまちづくりのエンジンはリノベーションスクールです。起業する人が自立するまで頑張ることが大事です。絵に描いた餅ではだめです。


 また、バラバラに動いてもだめです。一時的に活性化しても長続きしません。向かう方向、ベクトルを一致させることが大事です。


 小倉では、コンセプトのあるプロジェクトを街中で具現化する、補助金なしで構想を具現化することができました。


 2010年から始めたリノベまちづくりプロジェクトでは、小倉家守構想検討委員会の10人の委員に3人の志のある不動産オーナーを選定しました。