【6月3日付】鳥取環境大学公開講座 きのこの力でゴムをリサイクル

 鳥取市で5月5日、鳥取環境大学公開講座が開かれました。


 佐藤伸准教授が、キノコの力でゴムを再生させる研究について報告しました。


 キノコには、担子菌=木材腐朽力が強い。白色腐朽菌(白く腐らせる)、褐色腐朽菌(褐色に腐らせる)がある=と木材腐朽力の弱い子嚢菌、不完全菌があり、「石油ができなくなったのもリグニンまで分解する白色腐朽菌が生まれたから」という説もあると紹介しました。


 白色腐朽菌は、セルロース、ヘミセルロース(褐色腐朽菌も分解できる)に加えて、リグニンも分解するのが特徴だと指摘。それぞれを分解する酵素と活性酸素種を出して酸化分解するとのべました。


 樹木が、難分解物質のリグニンを生成するのは、食べられないようにするためだとしました。


 セルロースはグルコース(ブドウ糖)の糖鎖で、鎖(酸素による結合)を切れば食べられるが、リグニンは複雑で「どうやって分解しているか」詳しいメカニズムは解明されていないとのべました。


 リグニン分解酵素には、過酸化水素を用いるリグニンペルオキシダーゼやマンガンペルオキシダーゼがあり、マンガンペルオキシダーゼは、自らを酸化させてマンガンをMn2→Mn3に酸化させ、強力な酸化剤となったMn3がリグニンを酸化分解する▽一方で、ラッカーゼは銅を使って酸素を電子受容体としてフェノール基質を直接酸化、また、反応性仲介物質(メディエーター)を介して非フェノール性の基質を酸化する▽他にキノコは反応性の高い活性酸素を発生させて酸化分解する―と解説しました。


 このようなキノコの分解能力を生かして、微粉砕、マイクロ波、高温アルカリ処理、高温・高圧水、アルコール・酢酸・フェノール類、硫酸、塩酸などの前処理を要する木材糖化(酵母によるアルコール発酵でエタノールをつくる)において、白色腐朽菌を前処理としてリグニン分解に使うことで、エネルギーを使わずに木材糖化ができると紹介しました。


 他にもダイオキシンやノニルフェノールやビスフェノールAなどの環境ホルモンの分解、ポリエチレンやナイロンなどのプラスティックの分解にも使えるとのべました。


 ゴム製品は、ゴムノキから出る樹液(ゴムラテックス)に硫黄を加え(加硫して)、ゴムの分子間を架橋して(分子同士を結び付けて)、伸び縮みするゴムになるよう加工した加硫天然ゴムであり▽土壌菌以外で加硫天然ゴムを分解する白色腐朽菌は、国内では見つかっていなかったが、智頭町芦津で見つけた―と報告しました。


 それは、褐色腐朽菌のシロカイメンタケと白色腐朽菌のシハイタケの株であり、内部の架橋構造の切断のみならず、ゴム成分(炭素骨格)をも切断してしまうので、今後の研究は「架橋構造のみを切断して、ゴム成分を残してゴムラテックスとして再利用できるようにする」ことをめざしていると話しました。


 世界的規模で自動車用タイヤの需要は伸び、昨年1年間で1595万㌧のタイヤが生産され(そのうち39%が中国向け)▽日本国内では昨年1年間で9400万本、99万7000㌧のタイヤが生産され、63%が燃料として熱利用され、再生ゴム・ゴム粉や更生タイヤ台用(古タイヤ=台タイヤ=の表面を削って未加硫ゴムを貼り付けて加硫)の原料に16%が使われ、海外に12%が輸出され、1%が埋め立てられ、9%が放置・廃棄されている▽高性能化するタイヤで再利用が困難化している▽ゴム原料の生産が東南アジアに限られ、生産維持に問題がある―として、「環境に優しい加硫ゴムリサイクル」の確立が待望されていると語りました。