【5月20日付】鳥取大学公開講座 植物育成に有効な蛍光シート

 鳥取大学のサイエンス・アカデミーが4月14日に開かれ、工学部の大観光徳教授が「植物育成に有効な太陽光の成分を増やす農業用蛍光シート」の開発をテーマに講演しました。


 大観氏は、まず、生体の中で起こっている反応を観察するためのバイオイメージングの方法=光が生体を透過しやすい波長域(700~1400ナノ㍍)「生体の窓」に対し、光を当てると近赤外線(1000ナノ㍍)を発するナノスケール蛍光体を用いること=で、がん細胞などを特定できると指摘しました。


 光を当てると光る(励起する)ナノスケール蛍光体を血管に注入し、がん細胞に定着させ、励起光(近赤外線)を当てて蛍光体から出る近赤外線を捉えることでがん細胞の存在を確認(※)できるとのべました。


 ※ また、光を当てると活性酸素を発生させる光感受性物質と組み合わせることで、がん細胞を死滅させることもできる。


 さらに、太陽光を変換して植物育成に有効な波長の光を増やす蛍光体を分散させた農業用シート(波長変換蛍光体含有シート)を開発できれば、日本海側の低日照地域で農作物の栽培に活かせると強調しました。


 従来の有機系蛍光体を分散させた農業用シートは、紫外線により短期間で劣化するという弱点があったが、無機蛍光体(人口ルビーの粉末=アルミ酸化物と安全な3価クロム)を使用することで解決できると報告しました。


 光合成を行うクロロフィルは400~500ナノ㍍の青の光や650ナノ㍍付近の赤色の光をよく吸収し、茎の伸長や花芽形成に関わるフィトクロムは茎の伸長を促す650ナノ㍍付近の赤色と茎の伸長を抑制する700~800の遠赤色をよく吸収すると指摘。波長変換シートで赤色光を増やすことで、光合成を促進し、収穫量や栄養成分(ポリフェノールなど)の増加▽栽培期間の短縮→年間収穫量の増加▽遠赤色光による抑制→発芽や開花時期の調整で商品価値の向上―ができるとのべました。


 ホーリーバジルの栽培実験でシートの蛍光体含有率(0・1%~4%で)と収穫量・ポリフェノール含有率の関係を調べたところ、0・1%の成績が最もよく、乾物重量、ポリフェノール含有率とも約10%増加を確認したと報告しました。


 農学部では現在、トマトやイチゴの栽培実験を行っていると紹介しました。