【8月12日付】えねみら・とっとりが学習会 どう二酸化炭素をゼロにするか

 市民団体「えねみら・とっとり」は7月31日、国立研究開発法人・産業技術総合研究所主任研究員の歌川学氏を講師に鳥取市で「省エネ、再生エネで地域を豊かにする政策」をテーマに学強会を開きました。


 産業の脱炭素化
 省エネの推進を
 歌川氏は、パリ協定に基づく二酸化炭(CO2)素排出量の2030年目標(50年にほぼゼロに)を西欧は1990年比40%削減にしたが、日本は18%だと紹介。日本は石炭の使用を続け、本格的な産業の省エネを盛り込んでいないから目標が低いと指摘しました。


 日本全体のCO2排出量の6割を火力発電(3分の1)、製鉄(十数%)、化学工業、セメント、製油、製紙の6産業が占め、抜本的な対策が必要だとのべました。


 石炭と化石燃料の使用をなくすのが、世界の流れだが、日本は逆行しているとして、石炭使用の電力会社から世界が資金を引き揚げ、石炭使用に未来はないと断言しました。(※1)
 ※1 先進国の発電量に占める石炭火力の割合は、ドイツの43%に次いで日本の32%が2位、OECD欧州は22%です。90年比で日本だけが火力発電の割合を増やしています。


 16年の日本の電源構成は、天然ガス42・1%、石炭32・3%、石油等9・3%、水力7・6%、再生エネ(再生可能エネルギー)6・9%、原子力1・7%で、年間発電量は1兆436億㌔㍗です。年間電力消費量は約9000億㌔㍗、ピーク電力需要は約1億5000万㌔㍗(100万㌔㍗の発電所150基分)です。


 中国電力の電源構成は、17年で石炭59%、天然ガス21%、再生エネ8%、水力7%、石油5%です。


 すべての発電
 を再生エネで
 歌川氏は、石炭は同じエネルギーを出すのに天然ガスの2倍のCO2を出すと指摘。石炭・石油火力を30年までに停止し、天然ガス火力をコンバインドサイクルに転換し、50年までにすべての発電を再生エネにすることを提案しました。


 再生エネ導入で
 脱炭素・電化を
 製鉄、化学工業、セメント、製紙などは建築物の長寿命化などで生産量を落とす▽製鉄は石炭を使う高炉ではなく、電炉でつくるリサイクル鉄の割合を増やす。高炉割合を10%まで落とす▽全体として技術開発で省エネをすすめる―ことが重要だとのべました。


 乗用車、小型のバス、トラックは、50年までに電気自動車に100%変えるよう提案しました。ガソリン車はエネルギー効率が悪く、ガソリンの持つエネルギーの2割しか利用していない▽電気自動車はエネルギー効率が良く、モーターは電気エネルギーの9割以上を利用できる。ガソリン車より経済的―と指摘。エネルギー源を化石燃料から再生エネに変えることで、電気自動車のCO2排出をゼロに抑えることができるとのべました。


 原発は高コストに
 一方で原発は、世界ではテロ・安全対策などで建設費が高騰し、100万㌔㍗当たり3700億円だった建設費が1兆円になり、1㌔㍗当たりの発電コストが20円と割高になると指摘しました。


 発電は再生
 エネ優先で
 欧米では発電の優先順位は、燃料を使わない再生エネであり、再生エネの割合が高くなるほど、原発、火力発電の順番に出番が少なくなるとのべました。(※2)


 中国電力は、昼間のピーク電力需要の10%超を太陽光発電が補い、夜間に余剰電力でダムに揚水している。揚水発電もピーク電力需要を補うために使われている▽九州電力は昼間のピーク電力需要の少なくない部分を太陽光発電が賄い、供給過剰の電力でダムに揚水している―と紹介しました。


 ※2 追加コスト=燃料費など=は、発電1㌔㍗当たり再生エネ0円、原発1・5円、石炭火力8・4円、天然ガス12・1円、石油24・2円です。


 各国の発電量に占める再生エネの割合は、16年で日本が15・9%(水力を除くと8%)、北欧は高く、スペイン38・6%、イタリア38・1%、ドイツ29・3%、OECD欧州で33・3%です。


 日本のエネルギー消費は省エネがすすんで10年比で10%削減です。火力発電も10年比で1割以上減っています。


 再生エネの設備容量(17年9月)は、太陽光が5年で8倍の4100万㌔㍗=認定分を入れると7600万㌔㍗=、その他(風力、水力、バイオマスなど)は1600万㌔㍗=認定分を入れると3500万㌔㍗=であまり伸びていません。


 家電更新と
 断熱改修を
 歌川氏は、家庭、工場やオフィスなどの建物の省エネは、空調機器などの更新で電力消費を30~70%削減、建築物の断熱改修で暖房に使うエネルギー(電気、ガス・灯油)を60%削減、エネルギーを再生エネ100%にする(冷暖房はガス・灯油から電気ヒートポンプ・省エネ家電に変える)ことで、化石燃料の使用、CO2排出をほぼゼロにすることが可能だとのべました。


 省エネ・再生エネ
 で産業が発展する
 日本の年間28兆円の輸入燃料を再生エネに置き換えれば、西欧のように省エネ・再生エネ産業がGDPを押し上げ、自動車産業の1・5倍の雇用が生まれると強調しました。


 鳥取県も年間1600億円超が県外に流出している光熱費の内容を、化石燃料や電気などから再生エネ=太陽・風力・水力発電やバイオマス熱=に変えることで、お金の流出を防ぎ、省エネ・再生エネ産業を発展させることができると指摘しました。


 企業もお金をかけて省エネ・再生エネを実施することで、光熱費削減、経営改善ができ、地元業者が仕事を受注することで経済循環が生まれるとのべました。