【12月16日付】鳥取県社保協が伊藤千尋講演会 憲法使いこなし幸せに生きる

 鳥取県社会保障推進協議会は8日、ジャーナリストの伊藤千尋氏を迎えて学習と交流のつどいを開き、約80人が参加しました。


 伊藤氏は、「『ただ生きる』から『幸せに生きる』日本へ」と題して講演しました。


 海外(アフリカ沖のスペイン領グランカナリア諸島のテルデ市やトルコの県都チャナッカレなどのヒロシマ・ナガサキ広場)で〝自分の国にも9条が欲しい〟と「9条の碑」が広がり、沖縄の読谷村(被爆詩人の栗原貞子さんの長女の真理子さんが建てた)など、日本では21の碑が建てられていると紹介しました。


 コスタリカなどで憲法が生活に根付き、政治に生かされていることを取材をもとに語り、「日本でも憲法を使いこなせれば幸せに生きることができる」と強調しました。


 かつてのベネズエラでは、路上で売られていた憲法の本を買った赤ちゃんを抱いた若い母親が、「憲法を知らずにどうやって生きていけと、闘えというのか」と話し、福祉や医療のことで役所と交渉するときに、憲法の条文を読みあげて公務員の責務を説くことを紹介。スラム地区のスーパーでは、政府が援助して商品が4割引きで売られているとのべ、「貧しい人が生きていけるように国がお金を出している。日本では貧乏人は見捨てられている」と批判しました。


 コスタリカでは、憲法で軍隊が禁止され、軍事費分の予算が教育に使われ、▽子どもが無料で憲法裁判所に違憲訴訟を起こして、権利を勝ち取っている(小学校の近くに産廃が置かれて臭って勉強に集中できないなど。違憲訴訟は無料で氏名、連絡先、訴えの内容が分かれば、どんな紙に書いてもよい)▽小学校に入学して最初に学ぶことは「人は誰も愛される権利を持っている」ということ▽先生の質問に対し、台形の机を組み合わせて6人で討論しながら意見をまとめる、話し合うことが中心の授業―を紹介しました。


 1986年に当選したオルカル・アリアス大統領は、平和憲法を持つ国家の役割として〝話し合いの場〟を提供し、3つの国の戦争を終わらせ、ホワイト国連会議議長が提案した核兵器禁止条約が採択されたとのべました。


 安倍9条改憲にふれ、「9条に自衛隊を明記すれば、自衛隊が軍隊になって米軍の命令で日本人兵士が死に、監視社会が強まり、軍事費が2倍になり、医療も老後の生活も自己資金で賄えということになる」と警告しました。


 9条をマッカーサーに提案したのは、当時の幣原喜重郎首相であり、「原爆が飛び交う戦争が起これば人類は破滅する。世界中が軍隊を廃止するために、日本がその最初の国になる」と説得したことを紹介しました。


 憲法裁判所に大統領を訴え、232万人が下野ソング『これが国家か』を歌いながらデモをした韓国を例に、15%が一斉に行動を起こせば、社会を変えることができると呼びかけました。


 参加者から「安倍首相が憲法99条に違反して、国会に改憲を指図するなどの行為に対し、違憲訴訟できないか」「憲法違反の自衛隊をどうしたらいいか」などの質問が出ました。


 伊藤氏は「最高裁に訴えても具体的な利害が生じないと門前払いされる。憲法判断ができる仕組みを導入する必要がある(※)」「国境警備が薄すぎる。海上保安庁を大幅に増員し、スイスのように世界中に派遣する災害救助隊や軍隊の本義である屯田兵(平時は田畑を耕す農兵)に改組してはどうか」と提案しました。


 (※)憲法裁判所を設置する場合は改憲が必要。最高裁でも違憲審査は可能です。問題は、憲法に保障された裁判官の独立性がなく、最高裁に従属し、最高裁人事を内閣が握っていることです。