【10月13日付】ひきこもり 家族の中での孤独な闘い

 斉藤教授は指摘します。


 家族は最も重要な支援者であり、かつ、支援対象者です。


 そのため、家族が受け止められ、将来への希望が持てるようになり、心理的に安定することが大切です。


 価値観の転換(親の価値観から子どもの価値観へ)には強い支持が必要です。支援者が、▽家族を「このまま続ければ大丈夫だから」と励ます▽継続的に支援する▽指示するのではなく、共に歩む協働の姿勢で臨む▽家族会の中で「どのプロセス上にいるのか」判断して対応する―ことが大切です。


 次にひきこもりの本人の問題です。


 「きっかけはいじめや受験、就職活動などですが、根っこは、自分の感情を無視して頭でムリに頑張ってきたから、エネルギーがマイナスになっているんです」(ある経験者)


 本人たちは、▽感情を表すのが苦手で「いい子」だった▽「我がまま」ではなく、まわりに気を使いながら生きてきた▽人との交流が苦手で一人遊びが好き▽我慢強い―という性格です。


 外で心をすり減らし、エネルギーがカスカスの状態です。本人が求めているのは、家族とのだんらんです。


 ひきこもりになると、家族の中での孤独な闘いが始まります。


 ひきこもり経験者に聞き取り調査をすると、①家族の中での孤独な闘い②家族交流で力を醸造③あらたな自分に出会う―の3段階に分けられます。


 ひきこもりになる=家の中に逃げ込む=と、人間関係からの逃避が始まります。自己の操縦が不能になり、家族とのコミュニケーションが取れなくなります。家族に対して、▽「無視されている」「医者に強制的に連れて行かれるのでは」と勘繰る▽批判や叱咤激励への反抗から壁に頭突きをする、「おまえのせいだ」と親に責任転嫁する▽親から「あきらめられた」と思い、自暴自棄になる▽逃避のための昼夜逆転生活▽ゲームで気を紛らわす―ことになります。


 反抗・苦しみのアピール・責任転嫁→自己の操作不能→昼夜逆転・ゲーム―のループを繰り返します。


 「あの時ゲームが緩衝材だった。(現実と)向き合ったら終わっていた」(経験者)と言うように、本人にとって逃げ場としてのゲームは必要です。


 このような状態が何年も、あるいは10年以上続き、親は「子どもは苦しかったのだ」と気づきます。


 とりあえず、▽本人が安心できる環境を作る▽本人を無視せず、日常的な普通の会話をする―ことが大事です。


 「あの時、あったかいご飯を毎日作ってくれたことに感謝します」(経験者)と言うように、家族が普段通りに接する日常生活を送れることが大切です。