【11月10日付】日中友好協会米子支部が講演会 北東アジア情勢から取り残された日本

日中友好協会米子支部は10月14日、慶応義塾大学の大西広教授を招いて米子市で講演会を開きました。


 大西氏は、中国は経済面では国家独占資本主義の段階にあり、後発国としてアメリカと覇権を争っているが、アメリカが軍事力で世界を二分して資本主義国を支配しているのに対し、中国は(軍事的干渉を背景に)経済援助で影響力を拡大しようとしていると指摘。軍事的対立がなくなれば、アメリカの支配力は落ちるとのべ、ベトナムの南北統一、東西ドイツの統一で、それぞれ東南アジア、ヨーロッパでの影響力を失ったとのべました。


 北東アジアでも北朝鮮と韓国との戦争の危機が取り除かれ、在韓米軍も縮小・撤退の道をたどりつつあると指摘。徴用工問題(強制労働させられた元徴用工が日本企業に賠償を求める)の背景には、軍事的な緊張が解かれるなかで韓国が日本に気兼ねなく対応できるようになったこと、植民地支配を不問にする不平等な日韓基本条約・日韓請求権協定への不満があるとのべました。北東アジアで進む平和構築の流れに取り残された日本の対応こそ問題だと強調しました。


 中国の地方政府の歳入の半分が不動産開発収入(土地使用権売却)だったが、高度経済成長が終わり、富裕層への増税が大きな課題となっていると指摘しました。


 中国の内政について「誰のための政治を行っているかが大事だ。お金持のためか、貧乏人のためか。どちらの利益を代表しているか」として、「貧乏人のためにはそこそこやっている」とのべました。
 労働者より農民の方が、所得が低く、農民の多くが都会に出稼ぎに行っていると指摘。農産物の価格で収入が決まるが、中国政府は農産物価格の上昇目標を決めて、目標を下回ると農民に補助金を、上回ると消費者に補助金を支給していると話しました。


 日本とちがい、教育格差も埋める努力をしており、重点大学に貧困層も行けるように目標を持って支援しているとのべました。


 これまで相続税は問題にならず、「社会主義の理念の下で全ての農民に土地が保障され、全ての労働者に職が保障され、個々人は生産手段を所有していなかった(国営企業と集団所有制企業)。死亡と同時に回収され、相続税はいわば100%だった。鄧小平の下で資本主義化、市場経済と民営企業の導入が進められ、私有財産が認められた(2004年憲法改正で私有財産権を保護)」と紹介しました。


 所得税の最高税率は45%と日本と同じだが相続税がなく(国の税収は間接税の比重が大きい)、富裕層(1億人)・中間層(3億人)が形成され、9億人の農民との経済格差が広がっているとのべ、「富裕層は中国共産党と癒着し、相続税の導入を免れようとしているが、反腐敗運動で癒着を断とうとする動きもある」とのべました。