【7月12日付】新型コロナウイルスに有効な治療を 喘息の吸入薬やインターロイキンで

 こ夏、東京を中心に日本での新型コロナウイルス感染拡大の第2波が心配されています。


 英国の研究チームが先月、喘息や関節炎、アレルギーなどの治療に使われるデキサメタゾンが、新型コロナ患者の治験で死亡リスクを減らす効果があったと発表しました。


 オックスホード大学が主導する治験で、約2000人の患者に投与し、それ以外の4000人と比較したところ、人口呼吸器装着の患者の死亡率が40%から28%に減少、酸素吸入の患者の死亡率が25%から20%に減少したと報告しました。重症患者の死亡率を2~3割減らすことができたわけです。


 デキサメタゾンは1961年に喘息の吸入薬として登場し、1967年のベクロメタゾンで本格的に吸入療法が普及しました。後者は前者の600倍の抗炎症作用だと言われます。


 その後継薬がオルベスコです。どれも合成グルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)が主成分です。
 リンパ球のT細胞には、樹状細胞が抗原提示をするMHCⅡ分子に応答(結合)するCD4T細胞とMHCⅠ分子に応答するCD8T細胞があります。


 CD4T細胞は、1型、2型、17型の3種類のヘルパーT細胞に分化します。1型はインターフェロンγを産生してマクロファージなどを活性化させます。2型はインターロイキン4を産生して抗原を認識するナイーブB細胞を抗体産生細胞に分化させ、中和抗体(IgG)を量産します。17型は粘膜上皮細胞の抗菌ペプチド・レクチンを産生します。


 CD8T細胞は、抗原提示を受けて細胞障害性のエフェクターT細胞に分化し、感染細胞を破壊します。

 役割を終えたT細胞と抗体産生B細胞は死滅し、その一部がメモリーT細胞、メモリーB細胞として残ります。再感染後、抗原提示を受けたメモリーT細胞は、エフェクターT細胞として増殖、メモリーB細胞は抗体産生細胞として増殖し、それぞれ細胞性免疫、液性免疫として働き、ウイルスを死滅させます。
 インターロイキン7は、CD4、CD8の両T細胞と結合し、増殖を促進します。さらに、この細胞が体内で長く生存することを可能にし、ナイーブB細胞の増殖を促進します。グルココルチコイドは、T細胞のインターロイキン7受容体の発現を誘導します。そのため、グルココルチコイドとインターロイキン7の投与は、エフェクターT細胞を一気に増殖させ、インターロイキン4の働きと合わせて抗体産生細胞を一気に増殖させ、有力な治療方法となり得ます。(民報記者 岩見幸徳)

 新型コロナの特徴は、サイトカインストームという免疫の暴走が起こることです。インターロイキン6は、B細胞の抗体産生細胞への分化を促す一方、インターロイキン6増幅回路が活性化するとサイトカインストームが起こります。


 ミシガン大学の医師らは査読前論文で、人工呼吸器を装着する患者78人にインターロイキン6阻害薬を投与したところ、死亡率が投与しない患者と比べて45%低下したと発表しました(患者の選別に問題がなかったかが問われますが)。


 また、サイトカインストームが起こると、リンパ球の好中球が細胞内容物を細胞外に放出して病原体を捉えようとして、血管内皮の傷を塞ごうとして放出された血小板を捉えて血栓をつくってしまいます。


 デキサメタゾンなどのグルココルチコイドは、細胞内の核に入ってサイトカインを起こす遺伝子の発現を抑制し、サイトカインストームの予防にも有効です。