【7月19日付】コロナワクチンの考え方

 東京都医師会の尾崎治夫会長は10日、記者会見し、新型コロナウイルスの都内の感染者が連日200人を超えたことについて、「地域を限定して補償を伴う休業要請をし、2週間休んでいただき、その間にPCR検査を徹底的にやっていくことが今の段階では必要だ」と提言しました。


 現場を知る医師の提言に対し、政府と東京都はどう判断し、どのような対策をとるのでしょうか。判断を誤れば、感染拡大の第2波は防げないでしょう。

 ところで、この間、新型コロナを不活化する中和抗体(igG)が2、3カ月で激減することがわかってきました。そうなると、中和抗体をつくるワクチンが2カ月ももたない。6割の人が感染して集団免疫を持つという考え方も、2カ月で国民の6割が感染することは不可能ですから、政策的に一斉にその国の6割の国民が2カ月ごとにワクチンを打つ方法以外になくなります。そもそも抗体ができない可能性があります。


 一方で、スウェーデンのカロリンスカ研究所は、200人について抗体とT細胞について調べたところ、抗体が陽性だった人の2倍の人に新型コロナの抗原(スパイクたんぱく質)に特異的に結合するエフェクターT細胞(細胞障害性)が見つかったと発表しました。このT細胞は、過去に新型コロナかそれに近いウイルスに感染していたことを示しています。エフェクターT細胞は寿命が短いため、メモリーT細胞(抗原に出会うとエフェクターT細胞に分化、増殖)だと思われます。


 また、無症状や症状が軽かった人にも見られたとのことで、エフェクターT細胞が感染細胞を破壊してウイルスの増殖を防いだと考えられます。初期抗体(IgM)ができるのが感染して1週間、IgGができるのが10日~3週間、一方で感染力があるのは8日までとされており、IgGができるまでにエフェクターT細胞がウイルスを不活化した可能性があります。


 患者の8割が無症状か軽症だとされており、この場合、交叉免疫が働いたと思われます。メモリーT細胞が新型コロナに似たウイルスによってつくられており、新型コロナウイルスにも応答反応を起こしたと考えられます。


 ワクチンは、一般的に体内でウイルスの抗体をつくることで感染を防ぐことを目的にしていますが、流行前にウイルス本体ではなく、スパイクタンパク質を体内に入れることにより、T細胞を活性化させる(樹状細胞に抗原を提示させ、特異的なT細胞を分化、増殖させる)樹状細胞ワクチンも考えられます。
 感染後、T細胞の働きをウイルスの増殖が上回った場合に、中和抗体ができてウイルスを不活化させるので、その間の治療が大事になります。


 T細胞の増殖と延命を促進するインターロイキン7の投与も有効だと思われます。症状が現れた場合、重症化する前にグルココルチコイドを吸入し、インターロイキン6(増幅回路が活性化するとサイトカインストームを起こす)阻害薬を投与することで、サイトカインストームを防ぐことが重要になります。