【9月6日付】鳥取生協病院の皆木真一院長インタビュー 医療崩壊防ぐ医療機関への減収補填は急務

 コロナ禍のもとで患者を受け入れた病院はもとより、受け入れていない病院も収益が激減し、経営悪化が深刻になっています。鳥取生協病院の皆木真一院長に現場が抱える課題について聞きました。
(鳥取 岩見幸徳)


 この度、生協病院の院長名で県内の43病院に対しアンケートを取り組み、22病院から返信がありました。


 コロナの影響で全国的に医療機関の経営が厳しいと言われるなか、県内の病院の状況を調査して実態を把握し、行政に届けて改善のための要請をしたいというのが目的です。


 生協病院などの民間病院や公的病院の赤十字病院等は、地域医療を担う重要な医療機関ですが、公立病院とちがって独立採算制です。公立病院は、赤字が出ても国や自治体が補填して黒字決算にしますが、これらの病院は、そうはいきません。


 毎月黒字にしないと運転資金がなくなり、経営が持ちません。当院では、4~6月の決算が大幅な赤字で、福祉医療機構から融資を受けて何とかしのいでいる状態ですが、先の見通しがありません。建設費など既存の返済があり、余裕がありません。


 病院は、医療機器・設備の更新などで機能を維持、更新することで運営が成り立ちます。設備投資の返済分を運営費に上乗せして予算を組むので、赤字は出せません。


 急性期中心の病院では、外来は赤字部門で、入院で成り立っており、病床を93%以上埋めないと経営が回りません。「断らない救急」を合言葉に、厳しい人員配置のなかで、カツカツでやってきましたが、入院患者の減少で赤字に転落しました。


 この間のコロナの感染拡大で医療現場はひっ迫しています。コロナ患者が診療を受けた病院が風評被害で患者が来なくなったという例もあり、医療従事者には「持ち込まない」「持ち込ませない」という非常に強いストレスがかかっています。


 発熱者は動線を分け、一般外来に入れずに救急外来で診察し、コロナの疑いがあれば、駐車場の自家用車の中で医師がPCR検査の検体採取を行うこともあります。炎天下のなか完全防備ですから、かなりの負荷がかかります。


 玄関でのトリアージは2人でしていましたが、職員が足りず、外部委託にしたので病院の持ち出しです。面会禁止ですので、入院患者さんの荷物の受け渡しは、職員が窓口まで下りてきて行うので負担が増えています。


 国や県には、なんといっても減収補填を急いでほしいと思います。現状では全国民医連の調査でも7割の病院で資金ショートの危険があります。一つのベッドでも欲しいときに、地域で一つの病院がなくなったらコロナ対応がそれだけ困難になります。


 感染症の重点医療機関がコロナ患者を受け入れた場合、診療や手術が制限されます。それゆえ、コロナ患者を受け入れていない他の医療機関との連携もより重要となって来ます。そのような医療機関もまた大切なのです。


 また、コロナ後を考えても地域の医療機関は必要な基盤インフラですから、一つでも病院がなくなることは地域にとって大きなダメージです。効率優先の地域医療構想は、白紙に戻して、今後数年ごとに起こると言われている、コロナなど感染症を考慮したものに一から考え直すべきです。